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くりすたる・ぐらふぁー

思ったことをつらつらと。材料学とか。専門は結晶学。

構造解析-2

前回の記事では、構造解析で何が分かるのかを中心に書きました。

そこで今回は、構造解析として主に使われている方法を述べます。

 

構造解析では主にX線回折を用いることが多いです。結晶学の歴史を遡ると、1914年、マックス・フォン・ラウエはX線を結晶に当てることで次の2つのことを発見しました。

1.試料を通過するX線の他に、ある特定の方向へ散乱するX線があること

2.X線が散乱される方向が結晶によって異なること

そもそも結晶構造が分かっていなかった状態で、X線の散乱方向が結晶によってことなることをどのようにして分かったのかは不明ですが

 

出典:IUCr発行PDF http://www.iycr2014.org/__data/assets/pdf_file/0004/98590/220914_Japanese-rev.pdf

 

後に散乱方向や散乱強度が定式化されます。すると今度は散乱された方向と強度から逆算して元の構造を求める試みがなされます。これがX線散乱を元にした構造解析です。

 

現在どのように行われているかというと、無機材料であれば0.001~0.01mm立方の結晶をピンの先に付け、単一の波長のX線を当てて散乱像を検出器に記録します。有機物であればもっと大きな結晶を使ったかと思います。

 

この散乱像だけで各原子の位置や割合が求まります。そもそもどの原子がいるのかについては別の手段で既に分かっていることが多いので、この段階であまり議論にはなりません。

 

なお、この散乱(回折)については東北大学の高村仁先生による資料が非常に分かりやすいので是非。

http://ceram.material.tohoku.ac.jp/~takamura/class/crystal/crystal.html

 

次の記事では、X線が散乱する方向や位置がどのように決まるのかを含めて数式を含めた説明ができればと思います。

構造解析-1

無機材料学には、材料が原子レベルでどうなっているのかを解明し、その理由を考察する分野がある。構造解析とも呼ぶし、一般化して「結晶学」と呼ぶこともある。

 

「結晶」と聞くと、一般ではダイヤモンドやルビーの結晶を思い浮かべると思う。基本的にそれで間違いはない。しかし、それが例えば橋に使われる鉄鋼や半導体にも当てはまると聞けば、混乱する人もいると思われる。

実はこれらも結晶で構成されており「多結晶」の部類に入る。より細かく説明しようとすると別の領域に踏み込んでしまうため、ここで説明をとめる。

 

それでは構造解析は、何をすることだろうか。

1個のダイヤモンドがあれば、その1個の中にある原子全ての位置を決めるのだろうか。

いや、答えは、以下のように原子の位置を特定することだ。

f:id:Brightstar:20161125061853p:plain

(泉富士夫様作, 原子3D表示ソフトウェアVESTAで作成)

「これだけで充分なの??」と思う人もいるかもしれない。

上記は金や銅の単体が取ることで有名な面心立方構造であるが、実際の材料にはこれが縦横斜めに無尽蔵に並んで出来ているわけだ。

すなわち同じものの繰り返しなので、その「同じもの」さえ特定してしまえばお仕事終わりということだ。

 

それでは、構造が特定されるとはどういうことか。それは「どの元素」が「どの位置」に「どれぐらいの割合」存在するかを実験や計算で決めることだ。

「どの元素」...金か銀か銅か、それらがいくつあるのか

「どの位置」...ある原子を原点とすると、他の元素はどの方向に存在するのか。

「どれぐらいの割合」...どの部分を切り取っても元素が必ずその位置に存在するのか、それとも一部が欠陥によってなくなっていたりするのか。

 

そのうち「どの元素」、すなわち材料がどんな元素で構成されているかを特定する方法は別に構造解析でなくても簡易な方法がある。基本的にはこの「どの元素」という部分は予め決めておいて、後半の「どの位置」「どの割合」の部分に時間を充てることが多い。

 

それでは、実際に各元素の位置がどこにあるのかを特定する方法は次回の記事に記す。

 

無機材料学カテゴリ一覧

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