構造解析-1
無機材料学には、材料が原子レベルでどうなっているのかを解明し、その理由を考察する分野がある。
構造解析とも呼ぶし、一般化して「結晶学」と呼ぶこともある。
「結晶」と聞くと、一般ではダイヤモンドやルビーの結晶を思い浮かべると思う。基本的にそれで間違いはない。
しかし、それが例えば橋に使われる鉄鋼や半導体にも当てはまると聞けば、混乱する人もいると思われる。
実はこれらも結晶で構成されており「多結晶」の部類に入る。より細かく説明しようとすると別の領域に踏み込んでしまうため、ここで説明をとめる。
それでは構造解析は、何をすることだろうか。
1個のダイヤモンドがあれば、その1個の中にある原子全ての位置を決めるのだろうか。
いや、答えは、以下のように原子の位置を特定することだ。
(泉富士夫様作, 原子3D表示ソフトウェアVESTAで作成)
「これだけで充分なの??」と思う人もいるかもしれない。
上記は金や銅の単体が取ることで有名な面心立方構造であるが、実際の材料にはこれが縦横斜めに無尽蔵に並んで出来ているわけだ。
すなわち同じものの繰り返しなので、その「同じもの」さえ特定してしまえばお仕事終わりということだ。
それでは、構造が特定されるとはどういうことか。それは「どの元素」が「どの位置」に「どれぐらいの割合」存在するかを実験や計算で決めることだ。
「どの元素」...金か銀か銅か、それらがいくつあるのか
「どの位置」...ある原子を原点とすると、他の元素はどの方向に存在するのか。
「どれぐらいの割合」...どの部分を切り取っても元素が必ずその位置に存在するのか、それとも一部が欠陥によってなくなっていたりするのか。
そのうち「どの元素」、すなわち材料がどんな元素で構成されているかを特定する方法は別に構造解析でなくても簡易な方法がある。基本的にはこの「どの元素」という部分は予め決めておいて、後半の「どの位置」「どの割合」の部分に時間を充てることが多い。
それでは、実際に各元素の位置がどこにあるのかを特定する方法は次回の記事に記す。